箱庭の小鳥達 ５

注意・スザクさんに優しくない表現が含まれております。スザク好きな方は読まない事をお勧めします。




　謁見の間
　普段であれば、護衛の者達がズラリと居るのだが、今日は皇帝と宰相の二人しかいない。　
　他の者達は、下がらせている。

「ゼロとルルーシュが、政務に携わりたいそうですよ」

いつものロイヤルスマイルを浮かべたまま、シュナイゼルは父親たる皇帝へ可愛らしい双子の弟達の意思を伝えた。

「お前は、どうしたい？」
　ニヤリと笑いながら、自分によく似た息子を眺めた。
　姿形は母親似ながら、思考は自分に似ている。　
　数多くいる子供達の中では、一番自分に近い息子。

「兄としては反対ですね。あの子達は、私の庇護下にいて欲しい」

「ほ～お。兄としてはか、なら宰相のお前の意見は？」

どうだ？

人の悪い笑み。

「聞くまでもないと思いますが。あの子達は優秀だ。優秀な、あの子達を箱庭で飼い殺したくないですね」

ブリタニアという大国と互角に戦ったゼロ。そして、その補佐をしていたルルーシュ。

この上なく優秀な双子達だ。

「くくく、面白い。あの子達にはエリア11を与えよう」

どうなるか見ものだ。

「エリア11ですか。枢木君が知ったら大変ですよ」

ふふふと、シュナイゼルが含み笑いをした。

枢木スザクは、エリア11を開放させるために、双子達を売ってラウンズにまで上り詰めた男だ。

「フン。アレの功績はテロリストを捕まえた事ではない。あの子達を私の元に連れて来た事だ」

まあ、本人がどう解釈するかは別だがな。

「皇帝陛下も人が悪い」

あの裏切りの騎士は、未だに双子達の境遇を知らない。知らされていないからだ。

もっとも、誰も知らせるつもりがないのだから仕方がない。

 

 

それから一週間後、新しいエリア11の総督、副総督の補佐としてスザクが付くという辞令が下った。

「自分がですか？」

　宰相であるシュナイゼルに呼び出されて聞かされた話。

「そうだよ」

　ニコニコとシュナイゼルは、いつものロイヤルスマイルを湛えたままで、スザクには趣旨を把握する事ができない。

「なぜと、お聞きしても構いませんか？」

　エリア11の総督補佐。

　本来ならば、こちらから名乗り出たいくらいだが、なぜか勘が告げるのだ。

 

　これは罠だと。

 

「おかしな事を聞くね。君は、あのエリアに詳しい。それが理由だとは思わないのかい？」

　クスクスと笑いながら穏やかに言うシュナイゼルの言葉も、なぜか嘘臭い。

「思いません」

　ラウンズになって知ったブリタニアの現状。

　それは思っていたよりも酷かった。

　内部から変えたいという思いが強かったスザクは、友人を売ってまでラウンズの地位を望んだが、それも今になっては無駄だったと分かる。

　自分がどれほど頑張っても、何一つ変わらないという事を思い知った。

「うん。それは正しいよ」

「え？」

「実はね、これからエリア11の総督と副総督になる者は、私のお気に入りの弟達でね。それ以上に皇帝陛下も気に入っている子達なんだ」

「それは？」

　皇帝陛下が気に入っている？

　数多くいる子供達の、誰一人として可愛がっていない皇帝が？

　特定の子供を可愛がっているなど、初めて聞いた。

「父上が気に入っているなど、他の兄弟達に知られたら物騒だからね。今は特別な箱庭で暮らしているんだ。だが、あの子達も世間を勉強しても良い頃合だと思って、今回の総督・副総督の件が決まったんだよ」

　よほどその弟達の事が可愛いのだろう。

　シュナイゼルの笑顔が倍増している。

「それで、その方々のお名前は？」

　補佐に付けと言われながらも、スザクは肝心の名前すら教えてもらっていない。

「ああ、あの子達の名前ね。それは、う～ん。困ったね」

「何がですか？」

　なぜ名前を言うだけで困るのだろう？

「君なら分かると思うよ」

「え？」

　僕に分かる？

　僕が知っている皇族は限られている。

　まさか？

「私が愛してやまない弟達の名前は、ゼロとルルーシュだよ」

　クスクスと可笑しそうに笑うシュナイゼルの姿が憎く感じる。

「どうして？」

　ゼロはテロリストだ。

　ブリタニアに反旗を翻したテロリストなのに。

　どうして総督なんかになるんだ。

　監禁されているのではなかったのか？



☆終わらなかった（汗）
次で本当に最終回です。次回サブタイトル「光と闇」