諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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運命の始まり
☆藤ルル「偶然の出会い」「必然の再会」の続きになります。
最近ルルーシュが使い物にならなくて、生徒会の仕事が滞っている。
今日だとて、本来ならば生徒会の仕事だったのだが、ルルーシュの戦力外通知により自然解散となってしまった。
そして、生徒会室に残っているのは、ルルーシュとミレイの2人きり。
だが、ルルーシュの方といえば、携帯を見ては溜息、携帯を見ては溜息の繰り返しなのだ。
「そんなに気になるのならば、電話すれば良いのに」
「でも」
ミレイの呆れた声に、ルルーシュは力なく首を振るしかできない。
「ルルちゃん」
もうじれったい。
ミレイがルルーシュに携帯入りの箱を渡したのは、2週間以上前のことだ。
それなのに、未だに使われた形跡がないらしい。
「でも、電話を掛けたせいで迷惑を掛けたくない」
相手は追われている身だ。
万が一という場合もある。
電話を掛けるにしても、慎重にならなければいけない。
「もう、そう言っていると、一生電話なんか掛けられないから」
その通りだった。
現に電話を掛けられないルルーシュなのだ。
「分かってるんだ。分かってるのに」
自分に勇気がないから。
「それに、彼も彼よ。ルルちゃんが待って居るのを知っていながら掛けて来ないなんて」
焦らしプレイかしら。
「藤堂さんは悪くない。悪いのは俺が・・・・・・」
俺が悪いんだ。
シュンとしてしまったルルーシュを見兼ねたミレイは、エイっとルルーシュから携帯を取り上げてしまった。
「会長!」
「もう、ルルちゃんの溜息顔なんか見たくありません」
ニヤリと笑うと、勝手に電話してしまった。
「ミレイ!」
ルルーシュの悲鳴があがるが、ミレイは意地の悪い顔をするだけで、携帯を返す素振りはない。
「残念でした。繋がっちゃいました」
そして、告げられるのは最終宣告。
その頃、藤堂もまた同じように溜息を付いていた。
自分の気持ちに素直になるとは言ったものの、実際には電話すら掛けられないのだ。
「藤堂さん、また溜息です」
これで何度目の溜息だろう。
初めこそは面白半分で数えていたが、三桁の数字に近付くにつれ飽きて来てしまった。
そして、たぶん正確には分からないが(途中で数えるのを放棄したため)軽く三桁の数字は超えているだろう。
「ああ、済まない」
朝比奈の言葉も、藤堂にはどうでも良いのだろう。
視線は、手に持った携帯から外れる事がない。
「もう。気になるなら、掛ければ良いじゃないですか」
睨んだ所で、携帯が勝手に繋がる事はない。
「だが、相手は学生だぞ。授業があるかもしれない」
だが、時刻は5時を回っている。冷静に考えれば授業などとっくに終わっている時間だ。
「終わってますから」
「だったら、生徒会活動をしているかもしれない」
彼は生徒会の副会長なのだから。
「あーもう。それで、夜になったら予習か宿題が忙しいからとか言って電話を掛けないんですよね」
「・・・・・・・・・・・」
「それの繰り返しだって分かっていますか?」
朝比奈の言葉は正しい。
そう自分で言っているせいで、結局一度も電話を掛けることができないのだ。
せめてルルーシュ君から電話が来ないか期待するしかない。
だが、その期待も空しく、この2週間で携帯が鳴った事は一度も無かった。
「分かっている」
分かっているのだ。
だが、色々と踏ん切りが付かないのも事実だった。
「分かっていませんよ。こんなご時勢なんです。今日生きているからといって、明日も生きているとは限らない」
「朝比奈」
それは、目の前で多くの者を亡くしたからこそ言える言葉。
「それに、僕達は戦犯です。いつ捕まってもおかしくない」
「・・・・・・・・・・」
「だから、今を楽しみましょう」
ニッコリと笑って、朝比奈は藤堂から携帯を取り上げてしまった。
「おい!」
「大丈夫です。僕が代わりに掛けますから」
何が大丈夫なのだろう。
朝比奈がウキウキと唯一入っている番号へ掛けようとしたとき、初めて携帯が鳴った。
「「え?」」
まだ掛けていないのに?
不思議そうに携帯を眺めているだけの朝比奈に殺意を覚えながら、
「馬鹿者。早く貸せ」
不思議そうな朝比奈から、自分の携帯を奪い返すと、慌てて着信に出た。
「もしもし、藤堂で・・・・」
だが、最後まで言い終わる前に聞こえて来たのは楽しそうな女性の声。
『はーい。この携帯の買い主のミレイさんでーす。今、ルルちゃんに代わりますね』
楽しそうな女性の声に続いて、聞こえて来たのは愛しい人の声。
『あ、あの。藤堂さん』
「ルルーシュ君」
ああ、自分はこんなにも彼に飢えていたんだ。
ルルーシュの声を聞いただけで心が満たされた。
そうだ、自分は何を逃げていたんだ。
こんなにもルルーシュ君を求めているのに。
『済みません。迷惑でしたよね』
弱々しい言葉に、ルルーシュの方も遠慮していたことが伺える。
お互いに、お互いが遠慮していたのだろう。
「俺の方こそ済まなかった」
今だったら、素直に言えそうだ。
『藤堂さん?』
電話越しに聞こえるルルーシュの声は戸惑っている。
そんな声すら愛しいと思い、クスリと笑ってしまった。
そんな藤堂の様子に、傍で見ていた朝比奈が目を見開いていたが、それは完全に無視だ。
「愛している。ルルーシュ君の声がもっと聞きたい」
ずっと聞いていたい。
こんな単純なことなのに、えらく遠回りしてしまったようだ。
だが、これからは間違えない。
「俺も、俺も藤堂さんと、もっと話したい」
やっと言えた。
言いたかった言葉。
もっと話したかった。
『これからは、俺の方からも電話する。だから、ルルーシュ君も電話して欲しい』
「はい」
嬉しそうに携帯を握り締めながら頷いていると、目の前でピースしているミレイの姿が目に入った。
『出れないこともあるかもしれない。だが、出れる限りは出るし、時間の許す限り電話する』
「はい。俺も授業中は出れませんけど、それ以外は絶対に出ます。それに、俺の方からも掛けます」
嬉しそうに電話しているルルーシュに、ミレイは一言『お幸せに』そう言いながら生徒会室から出て行ってしまった。
残されたルルーシュは、この2週間を埋めるべく藤堂と話し続けた。
『これからは、毎日電話する』
「はい。毎日声が聞けるんですね」
嬉しそうなルルーシュ。
電話の向こうでは、藤堂も嬉しそうに微笑んでいた。
その後、いつも嬉しそうに携帯電話を持ち歩くルルーシュと藤堂の姿があった。
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