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諦めが肝心

黒子とギアスがメインかな?

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風邪引き天使【後編】

「え?」
 そこには信じられない光景。
 あの。
 あのとしか言いようのないシュナイゼルが、甲斐甲斐しく子供の世話をしていた。
「まだいたのか」
 思わぬ光景に立ち尽くしていたロイドに、シュナイゼルは冷たい瞳を向ける。
「えっと、そのチマイ子供は何?」
 何で、君のベットで寝ているんですか?
 聞きたいことはたくさんあるのだが、驚きすぎて言葉がでない。
「弟だ」
 そっけない言葉に、余計ロイドの目が丸くなった。
「君って、ブラコンだっけ?」
 確かに目の前の男には、母親の違う兄弟が多数いることは知っている。知ってはいるが、兄弟も所詮は他人と言い切ったのも、目の前の男だ。
 そんな人物が、幼い弟の世話をしているのだ。
 これが驚くなとという方が無理だろう。
「兄弟は、所詮は他人でしかない」
 やっぱり言い切ってるし。
 でも、
「言葉と態度が矛盾してるよ」
 どう見たって、可愛くって仕方がないという態度で弟の世話をしているように見えるのに。
「この子は特別だからな」
 そういって、自分のベットに寝ている弟に向ける瞳は、今まで見たこともないほどに穏やかなものだった。
「特別ね~」
 その表情を見れば納得してしまいそうになるが。
 それでもやっぱり実感が湧かない。
「この子は、俺の宝物だからな」
 小さな弟に慈愛の瞳を向ける悪友。
 何とも、不可思議な気持ちだ。
「それで、君の部屋で寝かせているの?」
 単に、子供の部屋で寝かせた方が良いんじゃないのかと思っただけなのだが。
「この子の部屋はない」
「へぇ?」
 一人暮らしの癖に3LDKという贅沢な環境にいる悪友。
 現に部屋は余っている。
 なのに、部屋がない?
 何で?
「こんなに小さいのに、一人部屋なんて可哀想だろう」
「そうかな~」
 小さなうちから独立心は持った方が良いと思うが、この悪友は考え方が違うようだ。
「それに、寂しいじゃないか」
「聞きたいような、聞きたくないような気がするけど、ここまできたら聞くしかないか」
「どうした?」
「誰が寂しいの~?」
 これで、この目の前で寝込んでいる子供が寂しいというのであれば納得できる。
 だが、もし違ったら。
 立ち直れないかも。
「私に決まっている」
「・・・・・・あ、そ」
 ガックリ。
 この悪友は、たった一ヶ月で変わってしまった。
 前はもっと、クールな人間だと思っていたのに。
「そうだ」
「それで、ベットも変えたの?」
 最後に来たときはシングルだったはずなのに、子供が寝かされているベットは、どう見てもセミダブルのものだった。
「ああ、一緒に寝るのなら少しでも大きい方が良いと思ってな」
「ダブルじゃないんだ」
 それだったらダブルの方が良いと思うのだが。
「ダブルベットだと、くっついて寝れないじゃないか」
「・・・・・・・変わったね」
 何がココまでこの悪友を変えたのだろう。
 まるで変態を見ている気分だ。
 ロイドが大きな溜息を付いたとき、ベットの中で眠っていると思っていた子供と目が合った。
 
 
「お兄ちゃん、だあれ~?」
 風邪の為が潤んだ瞳。
 ハッキリ、キッパリ言って可愛い。
「えっと、僕はシュナイゼルの友人です」
 友人と言ったところで、件の悪友の眉間に皺が寄ったが見なかったことにする。
「兄様のお友達?」
「そうで~す」
 こんな可愛い弟に『兄様』!
 一度で良いから言われたい!!
「あのね、僕が風邪を引いちゃったから兄様は学校を休んだの。先生は怒っていた?」
 自分のせいで兄が怒られたら嫌だと全身で物語っている。
「大丈夫だよ、こう見えても君のお兄ちゃんは外面だけは良いからね、絶対に怒られないよ」
「本当?」
 まだ心配なのだろう、目がウルウルしている。
「本当です。だから、早く風邪が治ると良いね」
「うん」
 最後に嬉しそうに笑うと、そこが限界だったのだろう小さな子供は眠りに陥った。
 風邪で辛そうではあるが、子供らしい寝顔は微笑むを誘う。
「これが君の天使ね」
 天使と言った意味が良く分かる。
 確かに天使そのもののような子供。
「分かったら、さっさと出て行け」
 二人きりの空間を邪魔されて不機嫌な悪友に苦笑すると、ロイドは持っていたプリントを手渡す。
「期限は明日だって」
「急だな」
 内容自体はたいしたことではないが、期限が明日ということでシュナイゼルは困っているようだ。
 小さな弟君は明日までに全快するとは限らない。
「待っていてあげるから、書きあげなよ」
「珍しいな」
 待つという事が嫌いなロイドの言葉とは思えないのだろう、だが今は少しでも長くこの弟君を見ていたいと思ってしまったのだ。
「ま~ね~。たまにはね~」
 そう言いながらも、ロイドの視線はルルーシュから外れない。
「この子は、誰にも譲らない」
「だろうね」
 少ししか見ていないが、悪友の執着心は凄そうだ。
「だが、見ているだけなら許す」
「はいはい」
 見るだけかと思いながらも、ただ見る事だってこの悪友には譲歩した方なのだろう。
「直ぐに書き上げる」
「は~い。待っているよ」
 そう言いながら、ロイドは子供を見続けた。
 今度来る時は、何かお土産でも持って来よう。
 何が好きか分からないから、まずは自分の好きなプリンを持って来る。
 そして、その時にプリンと共に自己紹介だ。
 
 
 目の前の子供と、人間らしくなった悪友を観察するのは楽しそうだ。
 ロイドの楽しみが、一つ増えた。 



☆ロイドはこれからもシュナ邸行きまくります。
そして、シュナ様をからかって(ルルで)遊ぶ予定。
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