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綺麗な瞳【前編】

 綺麗な瞳【前編】




 懐かしい夢を見た。
 子供の頃の、数少ない幸せな思い出。
「嘘つき」
 呟いた言葉は、相手には届かない。
 当たり前だ、あれから7年も経つが、未だに会えないのだから。
 それでも、会いたいと思ってしまった。
「朝比奈さん」
 言葉にすれば、余計に懐かしさが募る。


 日本人の子供達による暴力は、日常的だった。
 それでも、大怪我をする事がないだけマシなのかもしれない。
 そう思いながらも、ルルーシュは汚れた服装を気にする事もなく、真っ直ぐに自分達兄妹に与えられた土蔵に向かう。
 俯いてしまえば負けのような気がして、決して下を向く事はない。
「ナナリーの為だ」
 合言葉のように繰り返す。
 この言葉を繰り返してさえいれば、土蔵に付く頃には優しく強い兄に戻れる。
 弱い自分をナナリーに見せたくないのだ。
 繰り返して自分に言い聞かせていた為か、その存在に気が付くのが遅れた。
「綺麗な目だね」
 その人は、いつの間にか自分の目の前にいた。
「え?」
 日本に来てから、この瞳の色で苛められた記憶は多いものの、綺麗だと言われた事はない。
 だからかもしれない。
 何時もならば、他人に対して自然と身構えてしまうのに、この目の前の人には警戒心が沸かなかったのだ。
「うん。凄く綺麗な色だね」
 ニコニコと覗き込んでいる大人。
「えっと」
 この場合は、どう対処すれば良いのだろうか。
 ただ言える事は、ルルーシュの瞳を『綺麗』だと言うこの人の方が、キラキラと子供のように輝いた瞳をしている。
 この人の瞳の方が綺麗だ。
「あ!ゴメンね。僕は朝比奈省吾君です」
 自分に対して君付け。
 変な人なのかもしれない。
 だが、なんだか落ち着く。
「えっと、僕は・・・・」
 言って良いのだろうか?
「何々?」
 ルルーシュの名前を期待しているのかもしれない。
 朝比奈の目は、好奇心で満ち溢れている。
「えっと、その、ル、ルル・・・」
 ダメだ。
 言えない。
 言って嫌われたくはない。
 ブリタニアの皇族だと知られれば、この綺麗な瞳が曇ってしまうかもしれない。
 それは嫌だ。
「う~ん。ルルちゃんか。可愛らしい名前だね」
「え?」
 中途半端な所で言い淀んでしまったせいか、名前を誤解されてしまったらしい。
 その方が良いのかもしれないが、
「僕は男です」
 ちゃん付けは嫌だ。
「うん。そうだろうね」
 残念だけど。
 そう聞こえたのは気のせいだろうか?
「だから、ちゃんは止めてください」
 小さくても、プライドだけは大きいルルーシュには耐えられない。
「え~。可愛いから良いじゃん」
 ねー。
 同意を求められても、認められない。
「ダメです」
 クスクスと笑っている朝比奈にムッとしながらも、いつものように無視する事はなかった。
 嫌いな大人の言葉は、綺麗に無視するルルーシュだが、この時は無視する所かこの人ともっと話したくて仕方がない。
 ルルーシュから見て朝比奈は、子供のような大人。
 子供なのに、早く大人になりたいルルーシュとは正反対の人。
 正反対のような人なのに、どこか憎めない。
 それどころか、日本に来てから初めて安心という言葉が頭を過ぎった。
 自分達兄妹には、この日本に安全な大人は存在しない。
 何時だって危険と隣合わせなのだ。
 それなのに、警戒心を抱かせない朝比奈は凄い。
 こんな人が味方になってくれれば嬉しいのに。
 考えても仕方がない事を考えてしまい、ルルーシュはギュッと唇を噛み締めた。
「あ!ダメだよ」
「?????」
 咎めるような朝比奈の瞳に何だろうと首を傾げていると、
「血が出てる」
 顔の割にはシッカリとした指が触れてきたのはルルーシュの唇。
 力を入れすぎていたのだろう、噛み切っていたようだ。
「こんなの、舐めておけば直ります」
 日本に来てから、唇を噛み切った回数は計り知れない。
 辛さを耐えるために、何度も噛み締めてきた。
「そっか、じゃあ」
 急に屈んだと思ったら、目の前に朝比奈の顔。
 近くで見ると、この人がカッコイイ大人なのが分かる。
 が、近く?
 そう、気が付けば目の前に朝比奈の顔。
「え?」
 どうして?
 そう思っていると、ペロリと唇を舐められた。
「//////な!///////」
 //////////// 
 他人に唇を舐められるのは始めてだ。
 まあ、他人所か身内にも舐められた事はないが。
「ご馳走様」
 嬉しそうに笑う朝比奈。
 その笑顔に惹かれるものを感じながらも、やっぱりココは怒るべき所なのだろうか?
 パニック過ぎて、どうやら正常に頭が回らない。




☆朝ルルというか、朝子ルルです。
朝比奈さんの冒頭の台詞が書きたかったので、もう満足。
書きたい内容は色々あるけど、書いたら連載になりそうなので断念します。

 

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