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諦めが肝心

黒子とギアスがメインかな?

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守るべきもの

☆咲世子×ルル  騎士皇女設定です。





 その日、ルルーシュの元へ新しいメイドが増えた。
 メイドは、ブリタニアでは珍しい日本人の女性だ。
「初めまして、篠崎咲世子と申します。誠心誠意、お仕えしたおと思います」
 控え目な姿は好感が持てる。
「初めまして、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。こちらこそ宜しくお願い致しますわ」
 ニッコリと花が綻ぶような微笑に、咲世子の中に熱いものが込み上げてきた。
「恐れ多いです」
 だが、グッと堪えると、表面上は何事も無かったように取り繕う。
 自分がココに来た目的を忘れてはいけない。
 目の前の皇女様に惹かれそうになる気持ちを、我慢して押さえ込む。
「アリエスの離宮に仕えてくれる方々は、とっても仲が良いんです。咲世子さんも直ぐに馴染めるとおもいます」
「はい」
 これが、ブリタニアの皇族のカリスマ。
 傍にいるだけで、膝を折りたくなってしまう。
 人に使える事を生業としている自分には、眩しすぎる存在かもしれない。
 咲世子は、ルルーシュに気が付かれないように深呼吸をすると、完璧なメイドとしての仮面を貼り付けた。
「それでは、これから宜しくお願いしますね。でも、くれぐれもアリエスの離宮からは出ないようにして下さいね」
 優しく添えられた言葉は、その時の咲世子には意味が分からなかった。
 後に、嫌と言うほど思い知ったが。
「畏まりました」
 優しく微笑むルルーシュに対して、咲世子もニッコリと微笑んだ。


 咲世子がブリタニアに来たのは、偶然でも何でもない。
 ある契約に基づく密命の為だ。
 日本とブリタニアの関係は、可もなく不可のなくといった微妙な関係が続いている。
 だが超大国であるブリタニアと、一介の島国でしかない日本。
 世界的にも稀なサクラダイトが取れるとはいえ、日本の立場は弱い。
 そんな日本へ、ブリタニアが侵攻しようとしているという噂があった。
 ブリタニアに攻められては、日本など一瞬で滅んでしまう。
 その噂が真実かどうかを見極めるために、咲世子はブリタニアへと渡ったのだ。
 表向きはスーパーメイド。だが実態は篠崎流の流れを汲むくの一なのだ。
「噂は噂でしかないのかしら」
 1日の仕事が終わり、自分に与えられた部屋に戻ってくると、ようやく咲世子は肩の力が抜ける。
 メイドとしての仕事は多くない。元々、体力には自信のある咲世子には簡単にこなせるものばかりだった。
 だが、もう一つの仕事も同時にこなしているため、段々と体力が削られていく。
「もう一ヶ月か」
 咲世子がアリエスの離宮で働き出して一ヶ月。
 その間に分かったことは、このアリエスの離宮が平和そのものだということ。
 だが、一度アリエスの離宮から出てしまえば、皇族同士の足の引っ張り合い。
 蹴落とし、蹴落とされるのが日常なのだ。
「ルルーシュ様は、あんなに素敵な方なのに」
 その兄弟達の多くは、醜悪に近かった。
 そして、ブリタニアが他国へ侵略する気配はない。
「これで、任務完了かしら」
 自分お仕事は、あくまでもブリタニアの意向を知ることにある。
 侵略の気配すらないのならば、咲世子の仕事は終わりだ。
 この事を早く伝えて、日本へ戻らなくてはいけない。
 それで、任務は完了する。
 だが、帰りたくないのだ。
 アリエスの離宮は居心地が良い。
 いや違う、ルルーシュ様の傍にいたいのかもしれない。
 咲世子が悶々と考えていると、控え目なノックの音がした。
 こんな時間に訪ねて来るのは誰だろう?
「はい」
 少しだけドアを開けて部屋の外を伺えば、そこにはルルーシュ様の姿。
「ルルーシュ様?」
 どうして?
「あの、その、少しお話がしたくて」
 良いですか?
「はい。何もありませんが。どうぞ」
 長期間滞在する予定が無かったので、部屋には最低限の物しかない。
 部屋に入ってきたルルーシュ様の顔が一瞬辛そうなものになったが、何かを耐えるように下を向いてしまった。
 皇族の方を立たせているわけにはいかず、元々部屋に備え付けられていた椅子にルルーシュ様を座らせる。
「ありがとうございます」
 素直に座りながらも、ルルーシュの顔は下を向いたままだ。
「ルルーシュ様?」
 どうしたのですか?
 そんな気持ちを込めて問いかければ、
「咲世子さん」
 そうやくルルーシュ様が顔を上げた。
 だが、その瞳は悲しみに染まっている。
「ルルーシュ様?」
 何がこの方を、ココまで悲しませているのだろう。
 分からないことが悔しい。
「咲世子さんは・・・・・。咲世子さんは、ここから出て行ってしまうのですね」
 このアリエスの離宮から。
 悲しみに染まった瞳が、咲世子を見つめる。
「どうして・・・・・・」
 それを?
 誰にも言っていない。
 それなのに。
「初めは、何となく感じただけでした。それでも、段々と不安になってきて。それで、とうとうココまで訪ねて来てしまいました」
「・・・・・・・・・」
「この部屋に入って、不安が確信に変わりました」
「どうして?」
 部屋に入っただけで?
「だって、この部屋には余分なものが無さ過ぎます。長く暮らす予定がないから、物を増やさないのでしょう?」
「・・・・・・・・・」
 それは核心を突いた一言。
「この一ヶ月、咲世子さんが傍にいてくれ嬉しかったんです。咲世子さんはメイドなのに、なんだか守られているような気がして」
 可笑しいですよね。
 弱々しく笑う姿は、守ってあげたくなる。
 事実、この一ヶ月は咲世子が影ながら守っていたのだ。
 任務とは関係ないにも関わらず、ルルーシュに気付かれないように守ってきた。
「ルルーシュ様」
 ああ、もう。
 この人は、どうしてこんなに守りたくなってしまうのだろう。
 今まで咲世子には、大切なものも、守りたいものもは無かった。
 だから自由に契約して、自由に任務をこなしていた。
 それなのに、初めて任務に関係なく守ってしまった人。
「咲世子さんに、ずっと傍にいて欲しいと願ってしまうのは、私の我が侭かも知れません。それでも・・・・・・」
 傍にいて欲しい。
 縋るような瞳。
 自分を見詰める瞳に嘘は見えない。
「完敗です」
 もう負けを認めよう。
 だって、惹かれているのは事実だし。
 咲世子はニッコリと、心から微笑んだ。
「咲世子さん?」
 それは、初めて目にする咲世子の微笑み。
 いつもの控え目なものではなく、本当に嬉しそうな微笑。
「ルルーシュ様。私は、ある任務の為にアリエスの離宮というか、ブリタニアに来ました」
「そうですか」
「はい。そして、その任務も完了間近です」
「・・・・・・・・」
 やっぱり帰ってしまうのだ。
 日本という遠い国へ。
「でも、もしルルーシュ様がお許しになるなら、このままルルーシュ様にお使えしたい」
「え?」
「今度は、メイドとしてではなく、ルルーシュ様の騎士として」
 ここまできたら、もう自分の心を偽る事ができない。
 この人に使えたい。
 この人を守りたい。
 その人の傍にいたい。
 自分に、初めてできた守るべきもの。
 それが、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 誰よりも愛おしい皇女様なのだ。
「咲世子さんが、私の騎士?」
 目をパチクリとしている姿は愛らしい。
「そうです。ルルーシュ様の騎士になりたい」
 ブリタニアの皇族に仕える騎士。
 初めて聞いたときは馬鹿らしいと思っていた。
 だが、ルルーシュ様という人を知ったとき、この人の騎士になら成りたいと思ってしまったのだ。
 それでも、今までは任務の事もあったので無理やり諦めてきた。
「素敵ですね」
 嬉しそうに笑う姿に、咲世子の中の任務が完全に消滅した。
「はい。体力にも体術にも自信があります」
 もう日本がどうなろうと関係ない。
 どうせ、ブリタニアに戦争を仕掛ける気配はないのだ。
 簡単に報告だけで済ませれば良い。
 文句を言われても関係ない。
 元々契約は、完了時にお金を貰うことになっている。
 投げ出しても問題はないのだし。
 ルルーシュ様の騎士になる障害は、全てクリアされた。
「宜しく、お願いします」
 差し出されたのは綺麗な白い手。
「はい」
 咲世子は、しっかりとその手を握り返した。




☆一応、これの続きっぽいメイド兼騎士の咲世子さんとルルの話を書こうかと思っています。
でも、読みたい人とか居るのかな?

 

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