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諦めが肝心

黒子とギアスがメインかな?

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堕ちた果実【前編】

『大好きだよ』
それは、記憶の彼方の言葉。
金色の髪に優しい瞳。
一番優しかった頃の記憶だ。
母がいて、ナナリーが走り回っていた。
 寂しいだろうと言っては、よく添い寝してくれた。
 もう自分だって兄なのだから平気だと突っぱねたのだが、『私が寂しいんだよ』そう言われてしまい、結局一緒に眠る日も多かった。
二度と帰らない時間。


 ルルーシュが目を開けると、そこは見慣れた自分の部屋。
当たり前だが、隣を見ても懐かしい人は居ない。手探りで触っても、自分以外の暖かさは感じられない。
分かっているのに、それが悲しくて寂しいと思ってしまった。
「バカな」
寂しいなど思ってはならない、なぜなら今の自分にとって、あの人は敵なのだ。
「そうだ、敵だ」
敵なのだ。
分かっているのに、自分はゼロなのだから。
決して交わることはない。
それどころか、殺すか殺されるかの関係なのだ。
「兄上」
囁くだけで胸が温かくなる。
そう分かっているのに、敵なのだ。
「殺して見せます」
ゼロとして。
ブリタニアに切り捨てられた皇子として。

 
何事もない日々。
ただ募るのはイライラだ。
黒の騎士団は、正体を明かさないゼロを心の底から信じない。
だからこそ、実力を示すしかないのだ。
だが、どんなに実力を示した所で、彼等の疑心暗鬼がなくなる分けではない。
イタチゴッコだな。
「仕方がないか」
それでも、毎日過ぎていくのだから。
そして今日も同じ毎日が繰り返される。
「行くか」
ここで部屋から出なくても、ロロ辺りが心配して様子を見に来る。
そして、下手をすればスザクの耳に入るかもしれないのだ。
それだけは避けなくては避けなくてはいけない。
二度と皇帝に弄ばれない為にも。
 今日も見えない仮面を被る。昼間はルルーシュ・ランペルージという仮面を被り、夜はゼロの仮面を被る。
 本当のルルーシュは何処にもいない。
『疲れないか』
 頭の中に聞こえてきた魔女の言葉。
 幻聴だと分かっているのに、酷く心配そうな声が可笑しかった。
「仕方がないさ。俺が選んだ道だ。もう引き返せない」
 そう、引き返すことなど出来ないのだ。
 ただ前に進む。
 誰に省みられる事無くとも、進み続ける。
『ルルーシュ』
 悲しそうな魔女の声。
「ああ、お前は。お前だけは俺を俺としてみていたな」
 共犯者である魔女は、ルルーシュだけを見てくれる。
 今となっては、ただ一人の人物かもしれない。
 だが、所詮は魔女の心配も契約に基づいてのものだろう。不変的な心配ではない。自分が契約を果たせば、魔女だとて去っていく。
 そこに残される俺は、また一人に戻るのだろう。
 やるせない哀愁がルルーシュを襲うが、無理やり押さえつける。
「考えたとて仕方がないことだ」
 仕方がない。
 簡単な言葉。
 それでも、考えられずにはいられないのだ。
『大好きだよ』
 またしても聞こえてきた幻聴は、優しい過去。
「兄上」
 自分は、ココまで弱い人間だっただろうか?
 過去に。
 想いに。
 引きずられそうになる。
 分かっているのに。

 
 酷く疲れた。

 
 その日に限って、ルルーシュは上手く仮面が被れない。
 だからこそ、授業には出たくなかった。
「サボるか」
 無意識の呟きだったが、案外良い考えかもしれない。
 学園にさえいかなければ仮面を被らずにいられるのだから。
 

 それが運命の分岐点になるとも知らずに。




☆復活第一弾
 
 
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