諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
[121] [320] [319] [318] [317] [316] [315] [314] [313] [312] [311]
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
君が特別になった瞬間【前編】
2年のクラス替えで黒子の前の席になったのは、モデルで売れ初めている(女子が噂していた)という少年だった。
ほっそりとしていながらも、背が高く必要なところに筋肉が付いている。
黒子にとっては、とても理想的な体型の少年だった。
自分が望んでも得られなかったモノ。
それを持っている少年に、黒子は妬ましさを感じてしまい視線を反らせる事しかできなかった。
なのに、懐かれた!
「鬱陶しいです」
いつもならミスディレクションで綺麗に巻くのに、その前に見つかってしまう。
「酷いっス」
滝のような涙を流しながらも、それでも黒子から離れようといない黄瀬に呆れるしかない。
「ねえ、黄瀬君」
だから、少しだけ意地悪がしたくなった。
「なんスか?」
黒子から話し掛けられた事が嬉しいのだろう、黄瀬はニコニコとしている。
「黄瀬君は、部活に入っていませんよね?」
モデルの仕事がいつ入るか分からないので、部活はやらないと聞いた事があったように思う。
「入ってないっスよ」
入りたいんスけどね。
あはははと、頭を掻きながら言う黄瀬に嫉妬心が溢れてくる。
恵まれた体格。
羨ましいを通り越して、妬ましい程だ。
「だったら……だったら、バスケ部に入りませんか?」
バスケ部に入れば、もっと一緒にいられますよ。
心にもない事を言って、勧誘してしまった。
もっとも、この軟派な男にバスケ部の訓練が耐えられるとは思えないが。
だからこその勧誘だ。
これでバスケ部を直ぐに止めれば、突き放す理由もできる。
「そうっスね。今わりと暇だから、入るっス」
ちょうどモデルの仕事のペースも掴み掛けてきて、少しだけ時間に余裕が出てきていたのも幸いした。
なにより、大好きな黒子少年の傍に堂々といられるならと、黄瀬は大喜びで入部届けを出してしまった。
それから暫く黒子は、静かな時間を過す事に成功した。
別に黄瀬が直ぐにバスケ部を止めたわけではなく(予想以上に頑張っている)強豪と知れ渡っている帝光バスケ部の部活量は半端ない。
モデルと両立の黄瀬には、一杯一杯だったのだ。
だからこそ、大好きな黒子に絡むだけの体力もなくなっているのだ。
「あううう。黒子不足っス」
ヘロヘロになった黄瀬がコートの端で潰れていると、
「黒子なら、試合中だぞ」
「へ?」
不意に掛けられた言葉に顔を上げれば、同じ2年生ながらレギュラーを勝ち取っている男。
「緑間っち?」
「なんなんだ、その変な呼び方は?」
今まで緑間を変なあだ名で呼ぶのは、妙にハイテンションな某マネージャー位しかいなかった。
「オレっち、認めた相手には「っち」を付けるんス。緑間っちの事はソンケーしてるっス」
ニコニコと疲れていたはずの黄瀬なんだが、もう復活したようだ。
「ふん、まあいいのだ。それよりも良いのか、黒子の試合を見逃して」
本来、自分はココまでお人好しではない。
今回の事も、キャプテンに言われたに過ぎないのだ。
『アイツ、近い内に俺達の所まで引っ張り上げるぞ』
アイツが誰を指すのか、緑間にだって分かった。
そして、引っ張り上げるの意味も分かる。
黄瀬のプレーは、確かに自分達と同等の素質を持っている。5人目の『キセキ』と呼ばれるに相応しい人間だ。
『なぜ俺なのだね?』
適任者くらい、他にでもいそうな者なのに。
『黒子が嫌がるからだよ』
『はあ?意味が分からないのだよ』
黒子が嫌がるからと言って、なぜ俺なのだ?
『黒子さ、自分でバスケ部に入るよう誑かしたくせに、ヘロヘロになっている黄瀬を見ると申し訳なくなってくるんだと』
可愛いよな。
そう言いながらケラケラと笑う男。
『それで?』
なんなのだ。
『だから、お前が黒子のプレーを黄瀬に刻み付けろ』
アイツが本当の意味で帝光バスケ部の一員(レギュラー)になる為に。
『仕方ないのだよ。今回だけだからな、キャプテン』
『おう』
ヒラヒラと手を振りながら去って行くキャプテンの姿に、
『揃いも揃って過保護なのだよ』
自分もまた黒子に魅せられた一人。
黒子のプレーを認めさせる事を嫌がるはずがないと踏んでの人事なのだろう。
つづく
つづく
PR
← 君が特別になった瞬間【後編】 HOME SSの部屋 →
カウンター
プロフィール
HN:
伊月 優
性別:
女性
検索避け