諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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手紙 5
それから何かあるかと言えば、何もない。
自分達の役目は皇女殿下の護衛。
寝室以外は、交互或いは二人で護衛するだけだった。
そんな中で知ったのは、自分達の護衛対象のルルーシュ殿下がとても優秀だという事。
「理想よね」
「確かにね」
寝室の前まで送り届けた2人は、それぞれの部屋といっても皇女殿下の部屋を挟むように隣に面している部屋に戻るのだが、今日はカレンの部屋でお茶をする事になった。
スザクの部屋でないのは、彼の部屋にお茶類が置かれていないからだ。
飲み物はミネラルウォーターで十分という考えらしい。
「はい」
簡易キッチンでお湯を沸かすと、カレンは備え付けていた急須で緑茶を淹れた。
「ありがとう」
急須も湯飲みもルルーシュが気を使って用意してくれたのだ。
スザクの部屋にも同じものがあるのだが、肝心の茶葉が存在ない。
「あんたもお茶くらい自分で淹れなさいよ」
お茶が飲みたくなる度に、カレンの部屋にお邪魔する男に呆れてしまう。
「えー。でも、僕が淹れても美味しくならないんだけど」
前に一度だけ頑張ってみたのだが、別の飲み物になってしまった。
それからは自分で淹れる事を放棄している。
「はいはい。スザクに常識を求めた私がバカだったわ」
運動神経は人並み以上というか、化け物並なのだが、常識的な面が恐ろしく欠如しているのだ。
「何かトゲを感じるんだけど」
「気のせいよ」
キッパリ切り捨てると、自分の分のお茶を入れた。
「はー。やっぱり緑茶は一番だよね」
「そうね」
ゆっくりと緑茶を啜っていると、自分達が日本人だと実感できる。
「これでお茶請けがあれば最高なんだけどね」
ジーとカレンを見詰める目は、お茶請けを寄越せと物語っている。
「はいはい。全く」
ブツブツと言いながらもお茶請けの準備をしているカレンは、スザクにとって大切な友人だ。
誰よりも幸せになって欲しい。
「はい」
コトリと机の上に置かれたのは、美味しそうなお饅頭。
「え?どうしたの?」
自分達のシフトは完全に把握している。
こんな美味しそうなお饅頭を買いに行く時間などない。
「貰ったのよ」
だからこそ、本当はスザクにだってあげたくなかった。
自分1人で食べるつもりだったのに。
「誰に?」
「ルルーシュ様によ」
この間の任務のとき、お饅頭が好きだという話になった。
だが、常にルルーシュを護衛している立場としては買いに行く暇がないと、つい漏らしてしまったのだ。
別に他意があった訳ではない。
勿論、ルルーシュの護衛に不満があるわけでもない。
ただ懐かしくなって言ったに過ぎないのに、翌日にはお饅頭が届いた。
その優しさに、ホロリとしてしまった事はスザクには内緒だ。
「ズルイ」
僕だって甘い物は好きなのに。
カレンばっかり。
何かにつけてルルーシュ様がカレンを見ているのは知っている。
その慈愛に満ちた目に、焦がれるような羨望を向けた事だって数知れない。
同じ目で僕も見てください。
言いたくなってしまう。
でも言えない。
言ってしまえば、何かが変わってしまいそうな気がするから。
自分のスタンスを変えるだけの勇気が、僕には無かった。
「ズルクない。これはルルーシュ様の優しさなんだから。それに、ちゃんと分けてあげたでしょ」
本当は独り占めする気だったが、それは秘密。
「まーね。じゃあ、頂きます」
言葉と共にお饅頭を食べれば、口の中に広がる上品な甘さ。
優しい甘さは、これがそこいらに売られているような安物でない事を示している。
「これ、美味しいよ」
モグモグと口を動かしながら、早くも二個目の饅頭を狙っている。
「ちょっと、1人で食べないでよ!」
貰ったのは私なのに、気が付けばスザクは二個目の饅頭を手に取っている。
それに遅れを取るものかと、カレンも饅頭に齧り付いた。
「本当に美味しい」
上品な甘さ。
しつこくなくて、何個でも食べれそうだ。
「そうだよね。全部食べて良いよね?」
「え?」
その言葉にスザクの方をみれば、既に3個目の饅頭を手に取っている
「ちょっと」
慌ててカレンも二個目の饅頭を手に取る。
用意した饅頭は、数分もしないうちに綺麗に無くなってしまった。
「美味しかった」
満足そうなスザクの顔。
「食べすぎよ」
結局、スザクはカレンの二倍の量は食べている。
「だって、美味しいから」
「まーね」
スザクの言う通り、ルルーシュがくれたお饅頭は美味しかった。
「やっぱりルルーシュ様って、理想の上司よね」
綺麗で、頭が良くて、気が利く。
「そうだね」
ルルーシュの事を語るカレンの顔は恍惚としている。
その顔を複雑な心境で見ながらも、スザクは頷いて同意した。
「絶対に守ってみせる」
自分達がルルーシュの護衛を務められるのは、限られた期間だけ。
その間は、全力で守りきってみせる。
そして、願わくばルルーシュ様の騎士になりたい。
それは、叶わない夢かもしれないが。
☆ゆっくりと更新中。
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伊月 優
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