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諦めが肝心

黒子とギアスがメインかな?

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始まりの絆

☆藤堂子ルルです。「心の絆」の子供時代の話です。
 別名はルルーシュの自覚編でもあります。




 ルルーシュにとって日本の印象は最悪だった。
 自分達兄妹に与えられた居住区は土蔵だ。
 本来ならば人の住むところではない。
 それでも直接文句を言わないのは、それにより起こるであろう最悪の事態を避けるためだった。


 それでも、
「最悪だ」
 とうとう雨漏りまでし始めた。
 土蔵の屋根の修理などできるのか?
「不味いな」
 こんなことでナナリーが風邪を引いたら困る。
 どうしようかと悩んでいると、
「ルルーシュ!来てやったぞ!」
 スザクは呼んでもいないのに毎日のように来る。
「スザクか」
 元気すぎるのが何だが、それなりに役に立つので追い返したりしていない。
「どうしたんだ。元気が無いぞ」
 ボーっと考え事をしていたのだが、スザクには元気がないよに映ったようだ。
「雨漏りがするんだ」
 誤魔化しても仕方ないとばかりに言えば、
「う~ん。ココ古いからな」
 今まで雨漏りしていなかった方が不思議なくらいだ。
「直せないだろうか?」
 自分だけなら良いが、ココにはナナリーも居るのだ。
 雨漏りのせいで、これ以上不憫な生活をさせたくない。
「オヤジはダメだし・・・そうだ!藤堂師匠だ!」
「藤堂?」
 それは始めて聞く名前だった。
「俺の剣道の師匠なんだ。藤堂師匠なら何とかしてくれると思う!」
 それだけ言うとスザクは、来たときの勢いのまま帰って行ってしまった。
「お、おい。スザク」
 ルルーシュが慌てて止めようとしたものの、勢いのまま帰ってしまったスザクに届くことは無かった。
「何なんだ?」
 結局どうすれば良いんだ?
 

 それから1時間後。
 スザクが1人の大人を連れてきた。
 スザクが連れてきた大人は、ルルーシュたちの住む土蔵に顔を歪めたが特には何も言わなかった。
「ルルーシュ、藤堂師匠を連れてきた!」
 どうやら連れてきた大人が藤堂という人物らしい。
「はじめましてルルーシュ殿下。藤堂鏡志朗です」
 キビキビとした挨拶は、武道を極めた者だからだろうか。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」
 だが大人という存在に恐怖を覚えるルルーシュは、どうしてもぶっきら棒になってしまう。
「ルルーシュ。藤堂師匠に屋根を直してもらおう!」
 そんなルルーシュの様子に気が付かないスザクは、連れてきた藤堂に屋根を直すようにせがんでいる。
「スザク君。俺は大工ではないのだが」
 用件も言わずに連れ出されココまで付いて来たが、まさか屋根を直して欲しいと言われるとは思わなかった。
「え~!藤堂師匠にもできないことがあるんだ」
「普通はできないが」
 どの程度の修理か分からないが、期待させてダメだったとは言えない。
 ならば初めから諦めてもらった方が良い。
「スザクあまり無理を言うな。これくらいの雨漏りなら自分で直す」
 直すと言ったものの、本当に直るかは分からない。
 でも、ナナリーの為だ。
 だが、そんなルルーシュの言葉を遮ったのは藤堂だ。
「ダメだ。子供にそんな事はさせられない。皇子がやるくらいでしたら俺がやります」
 こんなに小さな子供にさせる訳にはいかない。
「だが・・・・」
「もし俺で直せなければ、専門の業者を呼びます」
「・・・・・無理だよ」
 藤堂のキッパリとした言い方にルルーシュは寂しそうに呟いた。
「皇子?」
「ココに来てくれるような業者などいない」
 自分達兄妹は異質なのだ。
 助けてくれる大人など居ない。
「ルルーシュ皇子・・・・」
 それは自分が考えていた以上に、この皇子の背負っているものが大きいということだ。
「だから藤堂も無理することは無い」
 ここにいても良いことなど無いのだから。
 寂しそうなルルーシュの笑顔に、藤堂は胸が締め付けられる思いがした。
 こんなに小さな子供が虚勢を張ってまで生きている。
 親に守られていて当たり前の年齢の子供がだ。
「無理じゃない」
 無理ではなく、心からこの皇子のために何かしたいと思った。
 自分にできることは少ないだろう。
 それでも何かあるはずだ。
「藤堂?」
「ルルーシュ皇子」
「な、何だ?」
 真剣な藤堂の様子に、ルルーシュは後ずさってしまった。
 ココまで真剣に見つめられたことなどないからだ。
「俺にできることがあれば何でも言って下さい」
「え?」
「ルルーシュ皇子の力になりたい」
「藤堂・・・・」
 真剣に自分を見つめる大人。
 それはルルーシュにとって始めての経験だった。
 見つめられて嬉しいと思うと同時に、暖かい気持ちが心を占める。
 この人の事が好きだ。
 自分は子供で相手は大人。
 だけど好きになってしまった。
「だから遠慮はいらない」
 藤堂は敢えて敬語をやめた。
 それはルルーシュを1人の人間として見ているという意思表示でもある。
「うん」
 そしてルルーシュの方も、そんな藤堂に答えるべく素直に頷くことができた。


 この時ルルーシュが感じた恋心は、7年後に実ることになった。 




☆書くと言いつつ中々書かなかった「心の絆」の子ルル編。
ルルーシュはこのときからずっと藤堂に想いを寄せていました。健気なルルーシュが大好きです。

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