諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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愛しい皇子
その日ロイドは、一日何も予定が無かったので、珍しくシュナイゼルの話に乗ったのだ。
シュナイゼル曰く『可愛らしい子供を見せてあげる』だった。
子供が苦手なロイドとしては遠慮したかったのだが、珍しく本気で嬉しそうなシュナイゼルの様子が気になってしまった。
だから付いて行くと言ったのは、本当に出来心に近かった。
そして辿り着いた先には一人の子供。
その瞬間、視線が釘付けになった。
出会えた。
本気で、そう思えたのだ。
「どうした?」
普段とは違うロイドの様子に、隣でシュナイゼルが不審がっている。
お互いに悪友と認識できる間柄だ、自分の様子がおかしい事ぐらい分かるのだろう。
だが、それよりも気になるのは、目の前の子供だった。
「しゅないぜるあにうえ、かれはどうかしたのですか?」
たどたどしい言葉が、幼さを強調している。
だが、この幼さでここまで喋れるなら、立派なほうかもしれない。
「あぁ、彼は病気でね。近寄ったらダメだよ」
勝手に人を病人扱いしたシュナイゼルは、目の前に居た幼い弟をヒョイと抱き上げてしまった。
「ほぁ」
シュナイゼルの行動に、幼い少年は目を真ん丸にして驚いていたが、大好きな兄の腕中かと知ると、自分のほうからギュッと抱きついた。
「あぁ、本当にルルーシュは可愛いな」
自分の腕の中で一生懸命抱き付いてくる弟の姿は、何よりも可愛い。
数多く居る弟や妹の中で、シュナイゼルにとって一番可愛いと思えるのは、このルルーシュだった。
ルルーシュの母親が庶民の出ということで、自分の母親や他の多くの兄弟達に、その母親達がヴィ家の人間を嫌っているのは知っている。
それでも、自分にとってはルルーシュが一番可愛いのだ。
「あにうえ」
腕の中から上目使いに見詰めてくる弟に、シュナイゼルはクラクラしそうになった。
「どうした?」
ルルーシュ限定の蕩けるような微笑で返せば、
「かれは、ほんとうにだいじょうぶですか?」
ロイドの方を指差して言うルルーシュに、
「病気だからね」
気にしなくて良いよ。
さらに、言い募ろうとしたときに漸くロイドが復活した。
「ちょっと。ルルーシュ殿下に何て事を言うんだよ」
人が運命の出会いに感動している間に、酷い言われ様だ。
そして、シュナイゼルの呼ぶ名前に、目の前の子供のが誰だか分かった。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
噂だけなら、何度も聞いた。
初めは、最近嵌っているナイトメアの関係で、母親であるマリアンヌ皇妃の事を調べているうちに出てきた名前だった。
写真は一枚も無かったので、今まで名前しか分からなかった。
その、名前しか分からなかった本人が目の前にいる。
「事実しか言ってないよ」
ルルーシュへ向けた笑顔とは180度違う、見事なロイヤルスマイルを向けられた。
免疫の無い人間だと、大概これ以上何も言えなくなってしまうが、長年に渡り悪友を続けていたロイドには無意味だった。
「はい、嘘。本当に嘘ですからね、ルルーシュ殿下は信じないで下さいね」
初めはシュナイゼルに、そして最後はルルーシュに向けての言葉だった。
「そうなのか?でも、しゅないぜるあにうえはうそをいわないんだ」
幼いルルーシュには冗談が理解出来なかったのだろう。
一生懸命首を傾げて考えている。
「あはは、性悪と違って素直で可愛らしい」
一生この人の傍にいたい。
ロイドの中で、その思いが溢れてくる。
「自分の事を言っているのかな」
「おや、空耳が聞こえるなぁ」
わざとシュナイゼルの言葉をスルーすると、
「ルルーシュで~ん~か~」
ロイドは嬉しそうに、未だに悪友の腕の中にいるルルーシュに問いかけたが、
「・・・・・・・・」
帰ってきたのは無言。
「殿下?」
「なまえ」
「え?」
「まだ、なまえをきいていない」
名前を呼ぼうにも、聞いていなかったことに気が付いたのだ。
「ロイドです。ロイド・アスプルンドです。ルルーシュ殿下」
「ろいどか。おまえもわたしとあそんでくれるのか?」
もうじき妹が生まれるということで、母親や館のメイド達はピリピリしていてルルーシュと遊んでくれないのだ。
そんなルルーシュの楽しみは、たまに尋ねて来る兄や姉達と遊ぶことだった。
今日もシュナイゼルが尋ねて来るという事で、ルルーシュは朝からソワソワしていた。
「私めで良いのでしたら喜んで」
ニッコリと微笑めば、ルルーシュも嬉しそうに笑った。
「あにうえ。ろいどとあそんでもいいですか?」
直ぐにでも遊びたかったのだが、ココは兄にお伺いを立てたほうが良いと思ったので聞いてみた。
「良いよ。ルルーシュは頭の良い人間が好きだろ。だからコレはルルーシュの為に連れてきたんだよ」
「・・・・・・・・・・」
コレ扱いですか。
まぁ、良いですけどね。
なんせルルーシュ殿下に紹介していただけたんだし。
でも、ちょっと・・・いや、だいぶムカつきますが、それ以上にルルーシュ殿下と引き合わせてもらったのだから。
「ありがとうございます。しゅないぜるあにうえ」
ルルーシュの嬉しそうな顔に、ロイドのムカつきは綺麗サッパリ消え失せた。
「どういたしまして。それより、急な用事が入ってしまってね。今日は一緒に遊べないんだ」
「え!そんな・・・・・」
楽しみにしていた分、ショックは大きい。
「変わりに、ロイドを置いていくから、好きに使って良いよ」
「ほんとうですか?」
希望に満ちた目でルルーシュが見上げれば、シュナイゼルにしては珍しく視線を彷徨わせている。
「ルルーシュには嘘を言ったことがないよ」
「はい」
良い子の返事を聞いたシュナイゼルは、先ほどからルルーシュを見つめているロイドに、腕の中のルルーシュを渡した。
「夕方には戻る。それまでルルーシュの事を頼むぞ」
「勿論」
答えながらも、ロイドの視線は腕の中の愛しい皇子に釘付けだった。
出会えたのだ
私の皇子に。
この時から、ロイドにとってたった一人の主が決まった。
それが、二人の出会い。
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