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諦めが肝心

黒子とギアスがメインかな?

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囚われの姫君【中編】

囚われの姫君【中編】




 ルルーシュに向けられる銃口。
 ああ、自分は死ぬのだと思った。
 それも良いかもしれない。
 ナナリーの居ない世界など、意味は無いのだから。
 ただ悔やむべきことは、これがシュナイゼルの策なのだと黒の騎士団の誰もが思っていないことだろう。
 『世界は闇に覆われる』もっとも、自分はココで死ぬのだから関係ないが。
 黒の騎士団の幹部ともあろう者達が、ここまで愚かだとは思わなかった。
 いや、それ以上にシュナイゼルの手腕が見事なだけかもしれないが。
 どのみち、ここで死んでゆく自分には関係ないことだな。
 ルルーシュが全てを諦めたとき、
「撃て」
 無情に響く声。
 ああ、世界はどこまでも辛いものだった。
 その時沸き起こった爆音。
 音と共に、銃弾からルルーシュを守ったのは神虎。
「コレは?」
 なぜ?
「無事のようだなゼロ」
 聞こえてくるのはココには居ないはずの男の声。
「星刻か?」
 まさかと思いつつ聞けば、
「そうだ」
 帰ってきたのは肯定の言葉。
「どうして?」
 どうしてココに居る。
 どうして助ける?
 二つの意味を兼ねた『どうして』だったのだが。
「そうだな、囚われの姫君を助けに来たナイトといったところか」
「はぁあ?」
 なんだ、それは?
 言っている意味が分からないのだが。
「それよりも、逃げるぞ」
 言うやいなや、神虎でルルーシュを抱きかかえた。
「ほあぁ」
 いきなりの事に驚いてしまう。
「舌を噛むなよ」
「いや、そんな問題ではないと思うが」
「行くぞ!」
 ルルーシュの言葉を無視すると、来たときに開けた穴から脱出した。
「うわぁぁぁ」
 なんなんだ、この展開は!
 流れに付いて行けないルルーシュは、神虎の腕に掴まるしかなかった。
「この辺で良いか」
 斑鳩の外まででると、ハッチを開けて中に無理やりルルーシュを押し込んだ。
「狭い」
「我慢しろ。元々1人乗り用だからな」
 そんな事を真面目に言う星刻に、
「というか、お前は何を考えているんだ!」
「そうだな、ゼロの・・・・いや、ルルーシュのことだけを考えていると言えば良いか」
「なぜそれを!」
 なぜ星刻が知っているのだ?
「極秘回線Aで見ていた」
「そうか・・・・」
 自分を裏切った幹部達と同じものを聞いたということか。
 なら、
「なぜ助ける?」
 同じ事を聞いたのであれば、助けるよりも殺すほうを選ぶのではないのか。
 奴らと同じように。
「見くびって貰っては困る。俺がシュナイゼルの言葉を全面的に信用すると思うか?」
「そうだな、お前はシュナイゼルの言葉だけは信じないな」
 天子様を利用しようとした男の言葉など。
「そういう事だ。ギアスについては、理解の範囲を超えたから無視させて貰った」
「・・・・・・無視?」
 恐れるでまなく、排除するでもなく、無視する。
 この男は、俺が考えていた以上に偉大かも知れない。
「そうだ、自分の理解できないことなど無視するに限る」
「良いな、その考え方」
 ナナリーの死亡を聞いてから、初めてルルーシュに笑みが浮かんだ。
「そうやって笑っていれば良い」
「え?」
「ゼ・・ルルーシュには笑顔が似合う」
 先ほどまでの死にそうな顔よりも、断然敵に笑顔が良い。
 元々が整っているだけに、笑顔に破壊力は抜群だ。
 現に、ルルーシュと密着している星刻の鼓動はドキドキと早鐘を打っている。
「星刻」
「ルルーシュ」
 2人が甘い雰囲気を出しているのは神虎の中。
 現状としては、黒の騎士団からの追求は終わってはいない。
 見詰め合った2人が、無意識にお互いの顔を近付けていると、大きな衝撃が走った。
「あ!」
 その衝撃で我に返ったルルーシュは、真っ赤になりながら星刻から離れた。
「おのれ、黒の騎士団め」
 あと少しというところで邪魔された恨みは大きい。
 星刻は黒の騎士団の追っ手に照準を合わせるものの、相手の数が多い。
 神虎1機て対応するには少しばかり面倒かもしれない。
 厳しい表情を数ばかり多い雑魚兵に向けていると、背後から物凄いスピードで迫ってくるナイトメア。
「新たな敵か?」
 雑魚ならば問題ないが、カレンか藤堂辺りならばヤバイ。
 そう思っていると、通信に割り込んできたのはロロだった。
「ロロ?」
 なぜココに?
 酷い言葉を投げつけた俺が許せなかったのだろうか?
「兄さん」
 だが、ロロの口から出てきたのは『兄』という言葉。
 まだ俺を兄だと言ってくれるのだろうか?
 ルルーシュはジーンと胸に熱いものが込み上げてきた。
「俺はお前に酷いことを言った」
 言ってしまった言葉は取り返しがつかない。
 分かっているが、それでも謝りたいと思った。
 星刻との会話で気持ちが楽になったせいかもしれない。
 それほどまでに、星刻という男は自分にとって大きい存在になっていた。
「兄さん。僕は兄さんの弟で良かったと思う。兄さんと会えたからこそ僕は人としての感情を知ったんだ。この1年は嘘じゃなかったと思う、だから兄さんと共に居たい。ダメかな?」
 どこかオズオズとしたロロの言い方に、ルルーシュは優しく微笑んだ。
「ダメじゃないさ。お前が俺の弟で、本当に良かったと思うよ。これからも宜しく」
「兄さん」
 嬉しそうな兄弟の会話を繰り広げながらも、神虎と蜃気楼は敵をバッタバッタと倒している。
「あ、あの」
 そんな兄弟の会話に割り込んできたのは、斑鳩に残されていたはずのC.C.の声。
「C.C.?」
「はい。ご主人様」
「どうして?」
 どうして声が聞こえるんだ?
「僕が連れてきたんだ。僕の後ろにいるよ」
 通信画面に映るロロの得意そうな顔。
「そうか、良くやった」
 確かに、あそこにC.C.を残しておいても仕方がなかった。
「私も、ご主人様の傍に居ます」
「ああ、そうだな」
 星刻がいて、ロロがいて、C.C.がいる。
 幸せかも知れない。
 自分はこんなにも愛されている。
 素直に感動していると、自分の腰に回っていた星刻の腕に力が篭った。
「これで最後だ」
 圧倒的に多かった敵の姿は1機もない。
 神虎と蜃気楼で全部倒したのだろう。
「ありがとう、星刻」
 今度こそ邪魔されないと思ったルルーシュが、そっと星刻に触れるだけのキスをした。
「ああ!」
「まあ」
 通信画面からロロの驚いた顔と、喜んでいるC.C.の声が聞こえてきたが、ルルーシュは気が付かない振りをした。
「続きは、帰ってからだな」
 ニヤリと星刻が笑うのだが、
「続き?」
 キスに続きがあるのだろうか?
 首を傾げているルルーシュには分からないようだ。
「・・・・・・・・・・・」
 ロロの呆れた顔が目に付いたが、どうしてだろう?




続く



☆ゴメンなさい。やっぱり(!)中編が出来てしまいました。星ルルだけで終わらせるのなら前後編で大丈夫だったのですが、リクエストに他の要素も書いてあったので、長くなりました。
ちゃんと「後編」で終わります。そして、多分というか、後編は絶対に短い。
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