片翼の天使 １５

ルルーシュの考える作戦は、驚くものが多かった。

精密に計算されていながらも、大胆で奇抜な作戦の数々。

今まで苦戦していたブリタニア軍との戦いも、ルルーシュが指揮を取るようになってからは楽に戦えるようになった。

「凄いね」

同じ年とは思えないほど、ルルーシュは凄い。

感嘆の意味を込めてスザクが言えば。

「そんな事はない。相手の攻撃パターンさえ読めれば、誰にだって作戦は立てられるさ」

それは本心からの言葉なのだろうが。

「いや。無理だから」

普通の人には無理だろう。

なのに、当たり前のようにサラリと言われても。

「簡単だぞ？」

幼い頃から戦略面の指導は受けていた。凄いと褒められる事が嬉しくて、次々に新しい戦略を考えていった。

ただ、あの人に喜んでもらうためだけに。

「ルルーシュとは、根本的に頭の出来が違うようだね」

僕には無理だ。

「そんなもんか？」

分かっていないのだろう、首を傾げている。そんな姿も、スザクから見れば愛しいのだが。

「そうだよ」

スザクが苦笑しながら言っても、ルルーシュには分かってもらえないようだ。

まだ首を傾げている。

「まあ、良いさ。それよりも、次のポイントの攻撃なのだが、スザクに任せても良いか？」

次の作戦は、とても重要なキーポイントだ。失敗は許されない。

だからこそ、確実に成功に結びつくメンバーで向かいたい。

「任せてよ」

ルルーシュに信頼されている事が嬉しい。だからこそ、いつも以上の力を発揮できるのだ。

「ああ。悪いが、お前に全てを賭けたい」

全体的な能力を考えれば、藤堂の腹心の部下である四聖剣に頼む方が良いのかもしれないが、果たして彼らが自分の作戦を素直に聞いてくれるかは分からない。だったら、確実に自分の作戦を遂行できて信頼も置けるスザクに頼んだ方が良いに決まっている。

「頑張るよ」

ルルーシュが作戦や指揮を取る。そして自分が動く。

これまでも何度かあったのだが、これ以上ないほど動きやすかった。

ルルーシュの声だけ聞いていれば良いのだ。雑音が気にならない。ルルーシュとならば、どんなことでもできそうな気がする。

「頼もしいな」

これまで色んなエリアでテログループの指揮を取ってきたが、スザクほど自分の指示通りに動いてくれる存在は居なかった。

ずっと側に居て欲しい。

そんな気になってしまう。

無理だと分かっているのに。

「

ねえ、ルルーシュ」

「なんだ？」

「藤堂さんに聞いたんだ」

「何を？」

　何を聞いたのだろう？

「今までに開放されたエリアはないって」

　ずっと聞きたかった。

　でも聞けなかった。

　聞いてしまったら、何かが変わってしまうような気がしたからだ。でも今なら、聞いても良いような気がしたのだ。

「それは！」

　藤堂が知っていてもおかしくはない。

　だが、スザクには知られたくなかった。本気で日本を返してあげたかったからだ。

　ルルーシュの役目はテロを成功させることだ。エリアを開放させることではない。だからこそ、テロが成功した暁には、そのエリアを直ぐに離れた。後の処理は『あの人』に任せて。その後に、『あの人』がブリタニア軍を動かすことなど分かっていた。分かっていたのに、誰にも告げなかったのだ。

　これは、今までの罪だろうか？

　こんな事でスザクに嫌われたくはないのだが。

「日本も帰ってこないの？」

　どうしても聞きたい。

　ルルーシュの口から。

「返す。日本だけは絶対にスザクに返すから」

　他のエリアには思い入れがなかった。だからこそ、アッサリと離れることができたのだ。

　だが、このエリアにはスザクが居る。絶対にスザクに日本を返してあげたかった。

「信じても良いんだよね」

　君の言葉を。

「ああ、信じてくれ」

　絶対に返して見せるから。

「分かった。信じるよ」

　君自身を。

君の言葉を。

「次の。次の作戦が成功した直後に、ブリタニアは変わる」

　ゆっくりと基盤を作りたいと言っていた『あの人』をせかした。

　今度の作戦が成功すると共に、ブリタニアの本国が大きく揺れるだろう。

　『あの人』の願いが叶うのだ。

「それって？」

　どういう事？

「だから、次の作戦が成功したら聞いて欲しい事がある」

　全て話そう。

　自分の事を。

「分かったよ。その為にも、作戦は成功させないとね」

　もっとも、ルルーシュの立てた作戦なら絶対に成功すると確信しているけど。

「ああ」

　話す時が、別れの時だ。

　分かっている。だからこそ、今という時を大切にしたい。

 

☆次は甘くなるかも。