諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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堕ちた果実【中編】
だからこそ、その人物が目の前に現れたときも、幻覚だとしか思えなかった。
「なぜ」
どうして、貴方が?
言葉に出していないのに、相手はニッコリと微笑んでいる。
「弟を迎えに着ただけだよ」
弟。
この人にとって、自分は弟というカテゴリに値するのだろうか?
自分にとって兄妹はナナリーだけだ。
他の誰も兄妹のカテゴリに入りはしない。
そのはずなのに。
「人違いです」
だからこそ、切り捨てなければならない。
哀しいと思うのは、夢見が悪かったからだ。
そうに決まっている。
「迎えに来たよ」
尚も優しく語り掛ける人。
底の見えない微笑みは、ルルーシュだけを見詰めている。
「・・・・・・人違いです」
そんな優しそうな瞳で見ないで。
縋りたくなってしまう。
全てを投げ打って、この人の手を取りたくなってしまう。
「遅くなってゴメンね」
困った顔をしている。
そんな表情など似合わないのに。
毅然とした態度が何よりも似合う人なのに。
「どうして、今頃になって」
どうして、自分が弱っているときに現れるのだろう。
ブリタニアを倒すのに、最大のネックはこの人だと分かっていた。
それでも、実際に合うまでは倒せると思っていた。
だが、
『大好きだよ』
頭の中で木霊するのは、過去の記憶。
「どうしてだろうね。これでも色々と考えたんだよ。私達は多くの柵を抱えている。柵を取るか、自分の気持ちを優先させるか悩んでいたら遅くなってしまった」
「それで、どちらを選ぶのですか?」
気持ち。
この人の気持ち?
ドクンと胸が高鳴る。
もしも。
もしも、自分と少しでも同じなら。
考えてはならない希望。
でも、考えられずにはいられない。
「自分の気持ちに正直に生きてみようかと思っているよ」
ニッコリと微笑む姿は、記憶の中の優しかった兄のものだ。
「シュナイゼル兄上」
二度と言わないと誓った言葉。
だが、今はスンナリと出てきた。
「嬉しいね。まだ兄と呼んで貰えるんだね」
寂しそうな、それでいて嬉しそうなシュナイゼルの様子に、ルルーシュは駆け寄りたい衝動に駆られるが、すんでの所で堪えた。
「シュナイゼル兄上。俺はブリタニアを倒します」
どんなに嬉しくても、この兄は敵なのだ。
駆け寄るわけにはいかない。
「うん。君なら、そう言うと思っていたよ」
「分かったなら、どうか俺の事は忘れてください」
身勝手なお願いだとは分かっている。
それでも、今は……過去の幸せに浸っていられる、この時間を壊したくなかった。
「無理だよ」
「兄上……」
やはり敵なのだろうか。
いや、初めから敵だったはずなのに。
分かっていたが、悲しみがルルーシュを襲う。
「ねえ、ルルーシュ」
名前を呼ばれるだけで、ビクリと体が竦んでしまう。
「・・・・・・・・・」
「ブリタニアが憎いかい?」
「憎いです」
全てを奪ったから。
「なら、私が壊してあげようか?」
「え?」
それは、考えてみみなかった言葉。
壊す?
この人が?
ブリタニアの宰相である、この人が?
何の冗談だろうと窺い知れば、その表情は真剣そのものだった。
「兄上?」
「ねえ、ルルーシュ」
ニッコリと笑っているのに、瞳の鋭さが裏切っている。
「何を言っているのか分かっていますか?」
この人は、自分の言葉がブリタニアに対する裏切り行為だと分かっているのだろうか?
いや、それよりも何故こんな事を言い出したのかが分からない。
「分かっているよ」
「兄上の立場からしたら冗談では済まされませんよ」
「分かっているよ」
「だったら!」
だったら、何故言い出すのだろう。
そんな事を。
同情ならいらないのに。
「分からないという顔をしているね」
面白そうに目を細めている兄。
何を考えているのだろう。
「分かりませんから」
本当に、何を考えているのか分からない。
「本当は、とても簡単な事なんだよ」
だけど、それに気が付くのが遅くなってしまった。
自嘲気味に呟かれた声に、ルルーシュは首を傾げてしまう。
「兄上?」
この兄は、もっと自信に満ち溢れた人だと思っていた。
だからこそ、後悔している様な表情が信じられない。
「だから今度こそ、自分に正直になってみようかと思ったんだ」
フワリと微笑む姿は、慈愛に満ちていて優しげでありながら、どこか妖うい雰囲気を醸し出している。
☆微妙に終わらなかった。
後編は短いです。
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プロフィール
HN:
伊月 優
性別:
女性
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