諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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手紙 7
穏やかな日々。
新しい護衛の2人は、予想以上に優秀でルルーシュの事を気遣ってくれる。
「それに、彼女は・・・・・・」
護衛の2人の事を考えていても、直ぐにルルーシュの思考はカレン1人の方にいってしまう。
「仕方がないのかもしれない。だって、彼女は・・・・・・」
そう、彼の妹。
自分が愛した、ただ1人の男性。
「ナオトさん」
彼から預かった手紙がある。
まだ知り合って間もない頃に、受け取った手紙だ。
あの時は、こんな事になるとは思ってもみなかった。世界を閉ざしていた自分に、優しく話しかけながら手紙を渡してきたナオト。あの手紙が切欠で、自分は戻って来られたようなものだ。
思い出すのは当時の記憶。
初めに聞こえたのは自分を気遣う声。
『このような所に居たら危ないですよ』
心を閉ざしていた自分は、目の前の人物の顔さえ見えていない。
『近くで戦闘があります。避難して頂きたいのですが』
服装から貴族か皇族だと判断したのだろう、言葉遣いは丁寧だった。
『どちらまでお送りすれば、宜しいですか?』
その後も、色々話しかけられたが、自分は一言も話さなかった。
いや、あの時はまだ話せなかったのだ。
心と共に、言葉までも閉ざしていたから。
『参ったな。どうしよう?でも、見捨てられないし』
こんな自分の事など見捨てて欲しかった。
『自分には・・・俺には、君と同じくらいの妹がいるんだ』
口調が変わった?
『だから、君を死なせたくない』
本気で言っているのが分かる。
こんな自分を気遣ってくる初めての人。
母と妹を失うと共に、後見人も失った。
利用価値が無くなったと思った大人達は、次から次へと去っていった。
残ったのは、僅かな使用人達のみ。
父のお情けで養生という名目で、この地に来たものの心が戻る事はなかった。
『辛い時は、声を出して泣けば良い。涙が辛い気持ちも流してくれるから』
だから、泣けという。
母と妹を失ってから、一度も泣いた事がなかった。心が麻痺してしまって、それどころではなかったのだ。
だが、
『もう大丈夫だから』
そっと、涙を拭ってくれる優しい手。
そう、初めて泣いたのだ。
『泣けるのは、君が生きている証拠なんだよ』
優しく抱き締められながら、頭を撫でてくれる大きな手。
『泣き終わったら、今度は笑顔を見せて欲しいな』
子供は笑顔が一番だからね。
上から聞こえてきた呟きに、まだ言葉は出ないものの、ルルーシュは素直に頷く事ができた。
その後は、心配して探していた使用人達が迎えに来てくれて戻る事になったのだが、離れたくなくて掴んだ軍服。
『困ったな』
その人も、使用人達も困りきっている。
ルルーシュの正体が、後ろ盾を失った皇女だと聞かされても、その人の態度は何も変わらなかった。
だからこそ、余計に離したくなかった。
『軍に戻りたいんだけど』
その言葉に、ルルーシュは首を振る。
『困ったな』
無理に剥がそうとはしないところが、この人の優しさなのだろう。
『お願いがあるんだけど』
優しい問いかけに、ルルーシュは掴んでいた軍服をギュッと強く握り締めた。
『妹に手紙を渡してもらいたいんだ』
そう言った、使用人たちに紙とペンを借りると何やら書き始めた。
『??????』
書きあがった手紙をルルーシュの空いている手に渡した。
『これは、俺から妹に宛てた手紙だ。これを妹のカレンに渡して欲しい。軍人である俺は、いつ死んでもおかしくない。だからこそ、この手紙を君に託したい。俺の気持ちが書かれている手紙だ。これは君にしか頼めない』
初めて人から頼られて気がした。
人に頼るのが当たり前で、頼られる事があるとは思わなかった。
『君にしかできないことなんだよ』
その言葉に掴んでいた手を離し、両手で手紙を抱き締めた。
『託して良いかい?』
真剣な言葉に、コクリと頷く。
『ありがとう』
感謝の言葉と共に、目に飛び込んできたのは笑顔。
世界に色が戻ってきた。
『じゃあ、お願いね』
それだけ言うと、名前も告げずに去っていった。
『あ!待って』
声が戻ってきたが、彼に届く事はなかった。
手に持った手紙だけが、彼が存在した事を証明してくれる。
彼の事を知りたいと思った。
だが、力のない今の自分では無理だ。
だったら、
『上り詰めて見せる』
彼の存在を見つけるまで上り詰めてみせよう。
その日から、ルルーシュの努力が始まった。
それから数年。
見つけ出す事のできた彼への第一声は、『もう離さない』だった。
☆過去編です。
ナオトとルルーシュの出会いを書いてみました。
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