諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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守ってみせる
☆ 日本が存在しています。
皇帝に呼び出されたシュナイゼルは、聞かされた内容に驚愕した。
「今更日本を侵略ですか?」
シュナイゼルの疑問はもっともだ。
留学と言う名目で弟と妹を人質として日本へ送り出したのは7年も前のことだ。
この7年間は微妙な均衡を持ったまま平行線を辿っている。
それなのに、今更開戦?
「そうだ。EUや中華連邦が日本を侵略しようとしておる」
「それこそ今更だと思いますが」
日本にあるサクラダイトは魅力的だ。
「サクラダイトは我が国にとっても必要だ」
「そうですね」
「それを他国へ渡すわけにはいかぬ」
「それは分かりますが・・・・・」
シュナイゼルの脳裏に浮かんだのは、幼い弟と妹の姿。
7年間一度も連絡していないために、浮かぶのは7年前の姿しかない。
「ルルーシュやナナリーのことはどうするのですか?」
7年前に人質として日本へ送られた兄妹は?
シュナイゼルにとってルルーシュは特別な子供だった。
他の兄弟たちとは比べようも無いほど特別だった子供。
皇帝もその事を知っていたのだろう、ルルーシュが日本へ送られたのはシュナイゼルが他のエリアの制圧に出ている時だった。
シュナイゼルが過去に記憶を飛ばしていると、
「ルルーシュとナナリーの事はお前に一任する」
「父上?」
「アレらは、もう死んでおる。二人のことは好きにするが良い」
皇帝の言葉に、シュナイゼルの表情が変わった。
「それは、見捨てても構わないという事ですか?」
「構わん」
その言葉にシュナイゼルは内心切れた。
皇帝にとっては、実の子供でもコマに過ぎないのは分かっていた。
だが言葉で言われて許せるかといえば、絶対に許せない。
「分かりました。二人は責任持って私が保護します」
「好きにするが良い」
「ええ、好きにさせてもらいます」
あの子達は・・・・
ルルーシュは私が守る。
日本にあるアッシュフォード学園の副会長は見目麗しく要領が良い。
学園の生徒なら誰でも知っている。
「ルルちゃんv」
「何ですか、会長?」
「次のイベントの事なんだけど」
「却下です」
前回のイベントから、まだ日にちが浅い。
「え~!まだ何も言ってない!!」
「聞くまでもありません」
「でも!」
「「でも」じゃありません」
会長のイベント好きにも困ったものだ。
「もうルルちゃんたらケチなんだから」
「ケチで結構です」
「でも真面目な話、生徒の皆が不安がっているのよね」
「それは・・・・・」
それはルルーシュとて気が付いている。
民間の間でも開戦が近いと囁かれている。
そのせいか、ブリタニア本国へ戻る家族が増えているのだ。
ここ2ヶ月くらいで、生徒が半数にまで減っている。
「だからココはイベントで盛り上げなきゃね」
ニッコリと笑うミレイに、とうとうルルーシュも折れた。
「仕方ないですね」
それに分かっているのだ。
生徒皆のためと言っているが、その根本は自分と妹の為だという事に。
この学園は自分達兄妹の為に創られた箱庭だ。
7年前にこの国に送られてから始めの1年の間は土蔵暮らしだった。
それでも寝泊りできるだけマシだと自分に言い聞かせてきた。
枢木スザクという友人もできたし、暮らしは最低だったが精神的には満たされていると思っていた。
そう、
あの日までは。
ナナリーが高熱を出したのだ。
幼い自分にはどうすることもできず、枢木首相に助けを求めても無視されてしまった。
だから、最終手段としてアッシュフォードに助けを求めたのだ。
母の後見人だったアッシュフォード。
母の死と共に没落してしまったことが申し訳なくて日本に来てから一度も連絡を取らなかった。
だが、ナナリーを死なせるわけにはいけないと思い連絡した。
それからの対応は素早かった。
枢木首相から自分達を強制的?に引き取ると、この学園を創ってしまったのだ。
自分達兄妹の箱庭として。
それから6年もの間、名前を変え身分を偽ってクラブハウスで暮らしている。
そしてミレイも、自分達兄妹のためを思って色々と尽くしてもらっている。
それが全てイベントと繋がるのはどうかと思うが。
ルルーシュが過去に記憶を飛ばしている間に、ミレイは辺りを見渡し誰も居ないのを確認すると、遠慮がちにルルーシュに声を掛けてきた。
「あの、殿下」
それは二人だけのときの呼び方。
どこに誰の目があるか分からない状況では、滅多に呼ばれることのない呼び方だ。
「ミレイ?」
「本国からの連絡はあったのですか?」
今でこそ身分を偽っているものの、元は皇族だ。
第11皇子で第17皇位継承権を持っていた。
「無いな」
あるとも思えない。
それがブリタニアという国だ。
「でも、殿下たちが居るのに」
このまま開戦すれば、真っ先に命を狙われる危険性がある。
「仕方ないさ」
アッシュフォードが引き取らなければ、とっくに殺されていただろう。
その為の存在なのだから。
「そんな」
殿下たちは何も悪くないのに。
このままではアッシュフォードだとて守りきれない。
ミレイは悔しさで唇を強く噛み締めた。
「ミレイ」
そんなミレイに、ルルーシュは優しく語り掛けた。
「今まで世話になった」
「そんな、そんなこと言わないで下さい」
それでは今生の別れみたいだ。
「ずっと言いたかった」
「殿下」
「アッシュフォードに守られて、この6年は平和に暮らしてこれた。ナナリーの笑顔が絶えることも無くて幸せだった」
これが最後かもしれないと思うと、わだかまりも無く素直に言える。
「そんな。そんな風に言われたら」
ルルーシュの言葉に、ミレイの目に涙が浮かんできた。
「ありがとう」
この先に待ち構えているのは、自分達の死だろう。
自分達の死が開戦の切欠になるだろう。
「殿下・・・・・」
「一人にして欲しい」
少し一人で考えたい。
「イエス、ユア・ハイネス」
それだけ言うと、ミレイは生徒会室から出ていていった。
残されたルルーシュは、
「コレで良い」
既に死んでいると言われた命だ、今更だった。
でも、最後に叶うなら、
「会いたいです」
この7年間一度だって言わなかった弱音。
日本へ送られることが決まったときから心の奥底へ隠してきた想い。
「会いたい・・・・・」
最後に一度だけでも会いたい。
「シュナイゼル兄様」
数多く居る兄の中の一番の大切な人。
庶民の出の母親を持つ自分にも優しかった人。
誰よりも優れていて、堂々としている姿は憧れの元だった。
「大好きですシュナイゼル兄様」
本人には言えない言葉。
「それは本当かい?」
「え?ほわ?」
誰も居ないとはずの背後からの声に驚いて振り返ると、そこに恋焦がれている存在。
ルルーシュの目が大きく見開かれる。
「久しぶりだねルルーシュ」
「嘘!」
そこには今まで自分が想い焦がれていたシュナイゼルの姿。
「嘘とは酷いな」
シュナイゼルが苦笑すれば、
「だって。どうして。ココは」
自分が何を言っているのか、驚きすぎてルルーシュにも分かっていなかった。
「迎えに来たよ」
微笑ながら両手を広げているシュナイゼルの元に飛び込みたい。
でも、
「でも。でも、迷惑・・・・・」
自分が行けばシュナイゼルの迷惑になるかもしれない。
そう思うと足が竦んで動けなかった。
「もう我慢するのは止めたんだ。だからおいで」
手の届く範囲に大切な存在が居るのなら、自分の持っている全てを使ってでも手にとってみせる。
「兄様の元に行っても良いんですか?」
その腕の中に飛び込んでも良いんですか?
「ああ。勿論だよ」
「兄様」
その言葉に、ルルーシュはシュナイゼルの腕の中に飛び込んだ。
「ああ、愛しいルルーシュ」
「兄様。兄様」
ずっと求めていた。
この腕を。
でも、皇帝に見放された自分にこの腕を取る資格はないと諦めていたのに。
「これからは私がルルーシュを守るよ」
もう手放したりしない。
「兄様」
シュナイゼルは7年の月日を埋めるかのようにルルーシュを抱きしめ続けた。
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