諦めが肝心
黒子とギアスがメインかな?
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片翼の天使 8
「辛い」
言葉に出すと、余計に辛さが倍増しそうだ。
分かっていた事何のに。
「ターゲット・・・・か」
先ほどの言葉が頭を過ぎる。
初めからスザクの正体はしっていた。
いや、自分がココに来たのはスザクと接触するためだ。
日本最後の首相の息子。
表向きはブリタニアに従順とされているが、その裏でテロリストとも通じている。
それはブリタニアに対しての背信行為だ。
「だが、」
それを利用しようとしている自分は、もっと汚い人間だ。
「スザク」
名前を呼ぶだけで胸が締め付けられる。
忘れたはずの、
棄てたはすの、
感情が蘇りそうだった。
「ゴメン」
それは、誰に対しての謝りの言葉なのだろう。
スザクか、それとも『あの人』か。
夢を見た。
母が生きていて、ナナリーも嬉しそうに駆け回っている。
「ルルーシュ」
「お兄様」
二人の呼ぶ声に、ルルーシュは笑顔で答える。
当たり前だと思っていた風景。
それを壊したのは、無数の銃声の音。
「ルルーシュ様!」
自分に覆いかぶさる大きな体。
何が起こったのか分からなかった。
自分を庇ってくれた大きな存在を退けると、そこは正に地獄のような光景が広がっていた。
「母上?ナナリー?」
夥しい血の海に横たわっている二人に声を掛けても返事が来ない。
「母上!ナナリー!」
恐慌状態になりながらも駆け寄ろうとしたルルーシュを止めたのは、力強い手。
「お待ちください」
ルルーシュを庇ったために自身も傷付いているジェレミアだ。
「放せ!」
母上やナナリーの元に行かなくては!
「危のうございます」
必死になってルルーシュを止めようとするジャレミアを振り払って行こうとしたのだが。
ダメ押しのような銃声。
「え?」
腹部が焼けるように熱い。
クラリ。
大きな眩暈。
「ルルーシュ様!」
ジャレミアの声が遠くで聞こえる。
そこでルルーシュの意識は途切れた。
次に目を覚ました場所は病院だった。
「目が覚めたようだね」
そこには見慣れた兄の姿。
「兄上?」
見慣れた兄ではあるが、とても忙しい人だという事もしっている。
「賊は捕らえたよ」
「賊?」
朦朧としている頭は、何の事だか理解できなかった。
「傷は塞がったが、まだ安静にしていると良い」
痛ましそうな兄の顔に、何が遭ったのか思い出してしまった。
「あ!兄上!母上は?ナナリーは?」
2人はどうなったのだろう?
「ルルーシュ」
悲痛な兄の顔で、二人に良くない事があったのは分かってしまった。
だが、自分は二人がどうなったのか聞かなくてはいけない。
「お願いです、聞かせてください」
この優しい兄は、自分の傷が完全に消えるまで黙っているつもりなのだろう。
それが、この人の優しさ。
「辛い想いをする事になるよ」
それでも良いのかい?
目が語っている。
「はい。それでも僕は聞かなくてはいけない」
僕だからこそ。
「分かった、ルルーシュの決意がそれ程ならば教えよう」
「ありがとうございます」
心からの感謝の気持ちを込めて言ったのだが、兄は余計に辛そうな顔をしている。
「マリアンヌ様は、お亡くなりになったよ。ナナリーを守って即死だったらしい」
「・・・・・そうですか」
やはり、最悪の事態が起こってしまったか。
母上。
誰よりも優しかった母。
誰よりも尊敬していた母。
「そして、ナナリーだけどね、手は尽くしたんだがダメだった」
「ナナリーも?」
そんな、それでは誰もいない。
大切なナナリーまで失うなんて!
自分の無力さがヒシヒシと体中を支配していく。
「ルルーシュ」
悲壮な兄の顔もルルーシュには映らない。
ルルーシュの小さな体は、全てを拒絶している。
「私が守ってあげる」
この小さな弟は、誰かが守らねば壊れてしまう。
ならば、私が守ろう。
幸い、自分にはそれだけの地位も権力もある。
「だから、私の方を見ておくれ」
優しく問い掛ける兄の言葉に、ルルーシュの瞳が揺らいだ。
「ルルーシュ」
尚も問い掛ける。
辛抱強く何度も名前を呼ぶ。
今呼ばなくては、永遠に弟まで失う事になるだろう。
「あ、兄上?」
何度目かの呼びかけで、初めてルルーシュは返事をした。
その事に喜びながら、
「君は私が守るよ」
この陰謀渦巻く皇族の中で、この弟は今以上に傷付くだろう。
それが分かっていたのに呼び戻したのは自分のエゴ。
「兄上」
初めてルルーシュが涙を流した。
綺麗な透明の涙。
「私は君の味方だよ」
小さな弟を力の限り抱き締めた。
自分が守ってあげるのだと知らしめるように。
この時から、ルルーシュの世界は兄が中心となった。
☆ルルーシュの過去編
兄の名前は、まだ未定。ギリギリまで長男か次男のどちらにするか考えます。
約2ヶ月ぶりの更新。この連載は、2月中には終わらせたいな。
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プロフィール
HN:
伊月 優
性別:
女性
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